肖像権に関する代表的判例

パブリシティ権(財産権)

ブブカスペシャル事件

①事案
この事件は、女性アーティスト合計16人の写真等が無断に掲載された雑誌「ブブカスペシャルvol.7」(本件雑誌)を出版・販売されたことに対し、本件雑誌出版社、発行人、編集人または代表取締役を相手方として、当該アーティストが、損害賠償を求めたというものです。 なお、本件雑誌には、上記女性アーティストらの芸能人となる前の姿の写真、路上通行中の姿の写真、制服姿で通学中の写真、実家や元実家の所在地、最寄り駅及び実家の外観等の写真が多数掲載されていました。また、本件雑誌の表紙には、芸能人女性23名の写真があり、その中には原告のうちの4名の写真(うち1名は全身の写真)が掲載されていました。

②第1審(東京地裁平成16年7月14日判決判例タイムズ1180号232頁)
第1審の東京地方裁判所は、芸能人であってもプライバシー権が法的に保護されることを前提として、芸能人となる前の姿の写真、私服姿で路上通行中の姿の写真、制服姿で通学中の写真、実家・元実家の所在地、最寄り駅及び実家の外観等の写真の本件雑誌への掲載及び販売につき、プライバシー権侵害を肯定しました。また、パブリシティ権侵害については、その判断基準として、「パブリシティ権を侵害する不法行為を構成するか否かは、他人の氏名、肖像等を使用する目的、方法及び態様を全体的かつ客観的に考察して、上記使用が当該芸能人等の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的とするものであるといえるか否かによって、判断すべきである」とした上で、説明記事の文章が少ないか、写真の大きさや使用態様を理由として、合計19点の写真の掲載について、パブリシティ権の侵害が認められています。

なお、この判決の中で、上記19点の写真がパブリシティ権を侵害する理由として、本件雑誌での写真の使用態様が、通常報酬が支払われるべきグラビア写真と同程度に利用されているためとの説明がなされています。

③第2審(東京高裁平成18年4月26日判決判例タイムズ1214号91頁)
第2審の東京高等裁判所は、第1審と同じくプライバシー権侵害を肯定し、パブリシティ権侵害については、その判断基準として、「出版物であるとの一事をもって、表現の自由による保護が優先し、パブリシティ権の権利侵害が生じないと解するのは相当ではなく、当該出版物の販売と表現の自由の保障の関係を顧慮しながら、当該著名な芸能人の名声、社会的評価、知名度等、そしてその肖像等が出版物の販売、促進のために用いられたか否か、その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうかを検討することによりパブリシティ権侵害の不法行為の成否を判断するのが相当である。」と判示した上で、第1審により侵害と認定された範囲よりも更に拡大した合計42点の写真について、パブリシティ権の侵害が認められました。

この判決は、パブリシティ権侵害の判断基準として、「芸能人の名声、社会的評価、知名度等、そしてその肖像等が出版物の販売、促進のために用いられたか否か、その肖像等の利用が無断の商業的利用に該当するかどうか」という基準を採用している点で重要な判決といえます。つまり、専ら顧客吸引力に着目した場合でなくても、無断で商業的に利用しさえすればパブリシティ権侵害に該当するとされました。
また「表現の自由」についても、「表現の自由の名のもとに、当該芸能人に無断で商業的な利用目的でその芸能人の写真(肖像等)や記述を掲載した出版物を販売することは、正当な表現活動の範囲を逸脱するものであってもはや許されない。」として、出版社側の主張は退けられています。

④上告審(最高裁平成20年10月15日決定(判例集未登載))
東京高等裁判所が出した判決は、出版社側により最高裁判所に上告されましたが、最高裁判所は、パブリシティ権を侵害するとの第2審の判断を肯定して、上告を棄却しました。 この決定は、最高裁判所として初めてパブリシティ権を認めたと評価できる画期的な判断といえます。